きりえ 「なわとび」

 




 蓮光寺まで新河岸川の土手を散歩したときのことだ。3月、卒園までもうすぐという時期であった。帰り道、一本のわら縄が落ちていた。農作業に使った後、捨てられて雨風にさらされたのだろうか。強く引っ張ればグジュグジュと千切れてしまいそうな古い縄だった。
 拾った女の子がその場でなわとびを始めた。少し短めだったし、古い縄なので、大事に持って跳んだ。すぐ友だちが「入れて」という。二人は呼吸を合わせて、「お嬢さん、おはいんなさい」を上手に跳んだ。髪が揺れただけ、心も躍っただろう。
 その辺にあるもので遊ぶ。何でも遊びの材料にしてしまう。想像力も必要だが、応用力もなければできない。それは遊びこんで遊びの面白さを知り、主体的に遊ぶ力量を持った子どもたちの特権かもしれない。
 この二人は卒園すると、当然バラバラに人生を生きる。やがていつか、いっしょに落ちていた荒縄でなわとびをしたことなどは忘れてしまうだろう。記憶は消えても、この満ち足りた時間のなかで育まれた生き方のようなものは失われることはあるまい。


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