きりえ 「ザリガニつり(2)」

 




 田んぼの稲が黄金色に輝くころ、年長組はザリガニ釣りにとり組む。今年は冷夏のせいで稲作は全国的に不作だという。不順な天候は、強靭なザリガニの生命力にも暗い影を落としたのだろうか。どこの用水路を探してもザリガニは少なかった。
 何でもよくこなす子が、意外に釣れなかったりする。友だちがどんどん釣り上げるのに、自分は一匹も釣れない。最初は場所を変えたり、エサをいじったり、焦っていろいろやってみるが、それでも釣れないと腹立たしくなってくる。悔しい。帰りの園バスの中で、一言も口を利かない子もいる。
 人生、いいときばかりではない。自分の不甲斐なさに耐えるのも生きる力だ。
 なぜ釣れなかったのか。釣れた友だちはなぜ釣れたのか。釣れた喜びや釣れなかった悔しさをバネに、クラスで話し合う。
 やがて二学期は運動会をめざして、跳び箱に挑戦するが、それは何段跳べるかということを競うのではなく、どうしたら跳べるか友だちの経験を聞き、跳べた子はその経験を言葉にして友だちに伝えて、コミュニケーションの力を養うのも大事な課題なのだ。
 ザリガニつりは、言葉での伝え合いの第一歩であり、それは運動会から、その後の人形劇づくりへとつながっていく、この時期の教育課題なのだ。

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