きりえ  「てつぼう」

 




 鉄棒にぶら下がった子どもの表情はいつもと違う。写真に撮ってみると、よく分かる。
 子どものころ、景色が逆になるのが怖くて、低鉄棒が苦手だった。体育の時間は隠れていたかった。戦争中だったので、少年はみんな飛行兵にあこがれたが、飛行兵になるためには円形の器具に大の字につかまって、グルグル回りの訓練を受けなければならない。「どうしよう!」。それが少年時代の最大のストレスだったと思う。
 子どもたちは楽しんで鉄棒をやっている。いいなあと格別の感懐をもって眺める。できない子には「できなくたって平気さ」と安心させ、自然になじませてやりたいと思う。
 ある保育園から転入してきた子が、びっくりするほど上手に逆上がりをした。スパルタ教育なのよ、とお母さんが顔をしかめて、「そういう教育方針についていけなくて」とのことだった。


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