きりえ  文庫で絵本を見る

 



 子どものそのに絵本文庫を開いたのは開園の翌年、昭和41年のことだ。当時、書店の店頭には「講談社の絵本」のような、どんな物語もダイジェストにしてしまう玩具絵本はあったが、岩波書店や福音館書店などの内容の立派な、値段の高い絵本はなかった。出版社から取り寄せるしかなかった時代だった。
 幼稚園や保育園には紙芝居はあったが、こうした絵本はほとんど置いてなかった。少なくも東上沿線のこの地域では、保育現場に組織的に絵本を持ち込んだのは、子どものそのが最初だと思う。上福岡市で最初に始めた「障害児保育」とともに、子どものそのが誇る『二つの初めて』のひとつだ。
 初年度の絵本購入費は5万円だった。いまと比べれば物価は安かったが、それでもいくらも買えなかった。書架は川越西口駅前にあった少年刑務所の木工所に頼んでがっちりしたのを作ってもらった。
 子どものそのは親の共同出資で設立されたので、文庫の開設と運営もお母さんたちの図書サークルがあたって下さった。今は各クラス選出の文庫委員がやって下さっている。井の頭保育園に福地園長を訪ねて、絵本文庫の実践を学んだ。保育園だから夕方迎えに来たお母さんが、子どもといっしょに絵本を選んで借りていく。「読み聞かせは親子読書です」と福地先生。「貸した本はみんな戻ってきますか?」と聞いたら、「帰ってこなかったとしても、絵本はそこで生きています」と、やさしい目でおっしゃったのを今も忘れられない。
 物語絵本のもつ面白さと、お母さんや先生の息遣いを感じながら読んでもらう楽しさが、ひとつに溶け合って、「絵本大好き」の子どもが育っていく。将来の読書力は、この時期に基礎が作られるのだろう。


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